2011年8月3日水曜日

ガイダンスで出た質問にお答えします。

 先日行われた進級ガイダンス、および、ゼミ・卒研ガイダンスで出された質問にお答えします。

Q.和田先生の「社会構造の近代と脱近代」のゼミの内容には、「地球環境問題」も含まれているのでしょうか?

A.和田先生より、以下のようなコメントをいただきました。


 「環境問題」は、後期近代社会(日本を含む今日の先進工業社会)の制度的構造を脅かすリスクの中でも最も典型的なものでしょう。というのは、この問題は今日の社会を形成してきた近代化の中核的理念であった工業社会化が生み出した問題だからです。

 つまり、われわれは工業化による豊かな社会を実現するために(天然資源の消費・浪費や温暖化といった)地球環境を大きく変えるという対価を支払ってきたといえるでしょう。ということは、「地球環境問題」は後期近代社会が直面せざるをえないリスクなのです。

 われわれはいったん手に入れた豊かな社会という生活環境を容易には捨てられないということからしても、「地球環境問題」は後期近代社会に生きるわれわれにとって、その生き方(ライフ・スタイル)の変化を含めた「価値」を問い直すという「再帰的近代化」という手続きによって解を見出さざるをえない今日的・地球的課題だといえるでしょう。



Q.国際関係については、具体的にはどのような方法を用いてアプローチしているのでしょうか?

A.国際関係については、当論系においては非常に多様なアプローチをとっています。特に深く関わるところでは、地域・都市論プログラムの文化遺産論(近藤ゼミ)や、子ども支援とまちづくり(喜多ゼミ)、共生社会論プログラムの人種差別を歴史的に考える(竹本ゼミ)、現代共生社会論(森ゼミ)、地域・文化・学びと平和構築(山西ゼミ)などがあるかと思いますので、ゼミ・卒研要項などで、それらのゼミの内容について確認して頂ければと思います。

 なお、もちろん社会構造論プログラムのゼミにおいても国際関係にアプローチすることは可能です。たとえば和田先生は以下のようにおっしゃっています。


 私自身のゼミでは、これまでは必ずしも国際関係ということまで守備範囲にはしていなかったのですが、もしも私のゼミで想定されるテーマを述べれば、以下のような事柄が可能だろうと思います。

 今日、社会のいろいろな側面でグロl-バル化が生じていますが、そのひとつに移民労働あるいは外国人労働者の雇用という側面でのグローバル化、あるいは観光という国際交流観光といったようなことが指摘できるとでしょう。海外から労働力を受け入れることは、一面でグローバル化された経済原理によって処理されることでありながら、他面では社会ごとの労働慣行や文化的背景の違いが様々な摩擦を生みだしていることとも否定しえない現実でしょう。

 観光の場合でも、受け入れも送り出しにおいても、誤解や偏見に起因する共生問題の発生が想定されます。労働問題という領域での異文化交流等の共生問題へアプローチあるいは観光等の場面での文化的理解の促進といった共生問題を論じる場合、「グローバル化」を扱う社会学・経済学・政治学等の社会科学的枠組みの中でユニヴァーサルなグローバリズムと文化環境・生活習慣・価値観の相違といったローカリズムの間の関連を明らかにすることもひとつの方法ではないかと思われます。



Q.竹本先生のゼミの“人種差別”というのは黒人などだけでなくネイティブ・アメリカンやインディオ(ラテンアメリカ)への差別も含むのでしょうか?“人種”という言葉の範囲はどこまでなのでしょうか?

A.竹本先生より以下のようなコメントをいただきました。


 ネイティブ・アメリカンやインディオに対する差別ももちろん含まれます。人種差別には、黒人差別や黄色人種に対する差別など、肌の色に基づく差別だけでなく、いわゆる民族差別なども含まれます。人種という概念自体、固定した不変のものではなく、あいまいなものです。そういうことも考えていくゼミです。



 ガイダンスのアンケート用紙に書かれた質問に対する答えは以上ですが、何か不明な点や、聞いてみたいことなどありましたら、遠慮なく論系室の助手の方までお尋ね下さい~。